フクロウの声

「おばあさま、これは何?」
 
桃色の頬が丸く可愛らしい兄弟が二人、
頭に大きな埃を乗せて自分より大きな行李を引っ張ってくる。

「おにい、おれも!」
 
弟が兄にじゃれるように行李を覗き込む。

「ん?どれだい。」
 
きっちりと着物の帯を締めた老婆は
兄が指差す行李の中を覗き込んだ。

そこには、巻かれた布が解けて白い鞘が見える。
かつて眩いほどの金色を放っていた鍔が今は鈍く濁っている。

「ああ、それはおばあさまの大事なものよ。」
 
老婆は目を細める。

「ふうん。刀?」
 
子供は興味津々に布を剥ぎ取った。

「抜いてみなさい。」
 
いたずらをするような顔で老婆は言う。

「よし!」

「おれも!おれも!」

「よし、じゃあ栄治はこっちを持て!」
 
思いきり力を込めて、兄は柄を、弟は鞘を持って引き合った。
ざりざりと音を立てて少しばかり刀は鞘から抜けたが、
激しく錆びた身が見えただけで止まった。

「なんだ、ぼろじゃんよ。」

「ぼろ!」
 
兄弟はがっかりしたように尻餅をついた。