「土方さんにも、きっと直に会えるさ。
 俺あの人には言いたいことが山ほどあるんだよな。」
 
藤堂は明るく笑った。

「こら平助、そんなことを言うとトシに怒られるぞ。」
 
近藤は藤堂を軽く拳でたたくような仕草を見せた。
 
沖田は笑みを浮かべた。

「総司、そろそろ行こうか。」
 
近藤が大きな手を広げて沖田に差し出した。

「はい。」
 
沖田は目を開けて刀をおろし、
その手をとった。

温かい近藤の手に触れると、ふいにマオリの顔が蘇ってきた。

「そうだ、近藤さん、一つ寄りたいところがあるんです。」
 
そう言って沖田は歩みだした。

 
翌朝、
庭で寝巻き姿のまま愛刀、
菊一文字を握り締めて事切れている沖田が
植木屋の主人によって発見された。

長年に渡って沖田を苦しめた
肺の病を感じさせることない、
まるで笑っているかのような穏やかな死に顔だったという。