沖田は裸足のまま庭におりた。
冷気を含んだ土が足の裏に心地よい。
 
夜空を見上げる。
フクロウの飛び去る月影が消えていく。
 
愛刀を抜く。
月光が抜き身に満ち、美しい波型模様を照らし出した。
 
沖田は愛刀の柄を持ち、両手で構えた。
目を閉じる。

「総司。」
 
沖田を呼ぶ懐かしい太い声。

「近藤さん。
 遅いですよ、待ちくたびれるところでした。」
 
総司は目を閉じたまま、声のするほうへ微笑んだ。

「いやあ、悪い、悪い。」
 
大きな手で近藤は頭を掻いた。

「待ちくたびれたのは俺のほうだよ。」
 
近藤の後ろから現れたのは藤堂平助だった。
不満そうに唇をとがらせている。

「山南さんも、山崎さんも、
 源さんもみんな総司のこと待ってるぜ。」
 
藤堂は月を指して言った。

それは懐かしい人々の名前だった。
沖田は山南が粛清された時には切腹の介錯を務めた。
山崎も井上源三郎も先の戦いで命を落としている。