「フクロウ。」
 
沖田が呼び、おれは目を細く開けた。

「おまえの死神、私がもらい受けよう。」
 
白い寝巻き姿の沖田は
枕元に片時も離さずに置いてある愛刀を手に、
むくりと起き上がって障子を開けた。

白い月が煌々と輝いている。

周りの小さな星の輝きなど打ち消してしまうほど眩しい。
沖田は、それまでと比べ物にならないほど
眩しく感じるであろう月を見上げた。

体は軽く、おれの力がなみなみと行き渡っているのがわかる。
こけた頬にすぐさま変化は見られなかったが、
うっすらと赤みが戻っているのが見て取れる。

「そして。」
 
沖田は続けた。
おれは沖田の肩に止まって言葉の続きを待った。

「マオリの元に戻ってくれ。」
 
優しげな眼差しで沖田はおれに微笑みかけた。
月影でくっきりとした顔立ちが美しく浮かび上がる。
 
死神を置いて、マオリの元へ戻れ。
 
それは沖田が、
小さなマオリの背中を何度も何度も反芻して出した答えだった。
 
いいのか。
 
おれは問いかけるように沖田を見た。
沖田の両瞳の中におれの金色の目が映りこむ。

「行け。」
 
そう言って、沖田は微笑んだ。
 
おれは大きく翼を広げて、沖田の肩を蹴って飛び上がった。