「おまえは・・・。」
 
おれは枝を蹴って羽根を広げて沖田の肩へとおりた。

おれの重みで倒れてしまうのではないかと思うほど、
頼りない肩だった。

「マオリは、おまえを届けに来たのか。」
 
おれは金色の目を開いて沖田を見た。
 
ホウ、と一声啼いてみせると沖田はその場にへたりこんだ。
力なく開いた手のひらから竹とんぼがぽろりと落ちて転がった。

 
マオリは、植木屋を出ると行く宛もなく歩き続けた。
 
あとからあとから涙がこぼれて来て、
着物の袖でぬぐうたびに薄桃色が紅色が変わった。
 
陽が沈みかけた橋のそばで、マオリは黙って佇む。

フクロウを手放した今、
どれくらいの時間が残されているのだろう。
もう何もかもやり残したことはない。
 
土手に座って、
幾度となく共に死線をかいくぐってきた白い刀を抱いた。
 
夕日は沈もうと徐々に傾いていき、
マオリの頬を赤く照らす。
 
命が、燃え尽きていくような光を放つ夕日を見つめながら、
マオリはゆっくりと目を閉じた。
 
まぶたの裏にも赤々とした太陽が見える。
それはだんだんと暗くなり闇に変わっていく。
 
マオリは自分の体から力が抜け、
若草の上に倒れたことを感じ取った。

もう起き上がる力は出ず、目を開けることもできなかった。
だんだんとまぶたの裏が闇に包まれていく。
 
頬を一筋、熱いものが流れる感触を最後に、
マオリは意識を失った。