「おい、何しやがる!」
 
男が声を荒げた。

「あの人たちは、自分一人になったって、戦いますよ。」
 
文句を言おうと立ち上がった男の目が止まった。
 
マオリの目は金色に光っていた。
 
ひとしきり眼光で男を震えあがらせるとマオリは店を出た。

「なんなんだ、あの女。」

「いやあ、ありゃ普通の人間じゃねえ。」
 
男たちの声が聞こえる。
 
マオリは空を見上げた。

霞んだ雲が月にかかっている。
もう、そよぐ風も柔らかく暖かい。
 
陽気であれば、沖田の体も少しは良いだろうか、とマオリは思う。
兄のように慕っていた近藤を失って、
さぞや気落ちしていることだろう。
 
マオリは歩き出した。
霞んだ月の光でも夜目のきくマオリには十分な明かりであった。
足音のしない不思議な足取りは、早く早くと急かすのである。