「おめ、沖田さんに憑け。」

・・・わかった。
 
沖田は、マオリを置き去りにすることで、
死神の道から逸らせようとした。

それは新撰組と共に戦うことが
マオリを死神にしていると思ったからだ。

しかし、それではマオリは死神から逃れることはできない。
おれがその命を助けたから。
 
マオリは、沖田を助けることができない。

医者でもないし、
ましてやマオリが沖田のためにできることは、
その身代わりとなって人を殺し続けることだけだった。
 
愛する男の命を救う方法は、自分の死神を捧げることだけだろう。

「沖田さんなら、おらみたいにならねえ。きっと。」
 
マオリはうつむいた。
 
眉間にしわをよせ、
口元をひくつかせて泣いている。

抜き身のままの刀を持った手で涙を拭った。
 
往来の隅にうずくまって泣くマオリを、
みなしごとなった子供だけがうつろな目で見つめている。

「あ、あんちゃんフクロウが啼いてる。」
 
弟が虚ろな目で、兄に寄りかかりながら空を指差した。
 
ホウ、ホウ、ホウ。
 
おれは啼いた。
 
ホウ、ホウ、ホウ。
 
何百年かぶりに、泣いた。