沖田の療養する部屋を土方が訪れた。

「そうですか・・・。」
 
土方の言葉に沖田は言葉少なにうなずいた。

「久々の江戸は、どんなでしょうねえ。」
 
明るい沖田の声が寂しく響く。

「すまない。出航は十日だ。」
 
徳川慶喜が東軍を置き去りにして江戸へ帰ってしまったことにより、
新撰組にも解散命令がくだされた。

負傷している近藤、
病床の沖田も一緒に江戸へ船で戻ることになったと、
この日土方は沖田に伝えに来たのだった。

「私がいれば、西軍なんてあっと言う間に壊滅させられたのになあ。」
 
冗談とも本気ともつかない物言いで沖田がつぶやく。

「そうでもないさ。
 もう刀でチャンバラする時代は終わっちまったみてえだ。」
 
土方はため息をついた。

「やだなあ、土方さんらしくない。
 そうだ、マオリは息災にしていますか。」
 
近藤、沖田不在の戦線で疲れているであろう土方に、
沖田は精一杯の軽口をたたく。

「ああ、いきなり来た時は、
 おめえの代わりをするだなんて言いやがって驚いたが、
 今度の戦じゃあいつにどれだけ助けられたかわからねえ。
 あいつを新撰組に戻してくれてありがとうよ。」
 
土方はそう言って顔をあげ、ぎょっとした。
沖田はクマのできた両目を見開いている。

「どうした、総司。」
 
土方は沖田の様子に驚き、覗き込んだ。