それにしても、火をつけるとは
人間どものやることのえげつなさと言ったらない。
その点、おれはマオリに対してわずかに同情していた。
マオリは肩で息をしながら神社にたどり着いた。
石段に上の弟を寝かせると、
湧き水を見つけて夢中で飲んだが、すぐにむせて吐いた。
喉を焼いているのだろう。
おれはマオリの様子を目を細めて見つめた。
マオリはよろよろと上の弟の元へ戻った。
石段に寝かせた弟はすでに息絶えかけていた。
マオリにはそれがわからないようで、
自分の着物の袖を千切って湧き水で濡らし、
必死に上の弟の傷を冷やしていた。
ふらふらと、
何度も何度もマオリは湧き水と上の弟の間を行き来した。
そんな愚かな行為をおもしろがっておれは数えていた。
百まで続くかと思ったが、マオリは倒れた。
無理もない。
マオリにも死は近づいている。
第一に火で焼かれた傷、そして第二に、
奇病は間もなくマオリを襲うだろう。
マオリは仰向けになった。
おれはマオリと目があった。
もっとも気のせいかもしれない、人間に見えることはめったにない。
しかし、それにしてはマオリは
おれの姿をしっかり捉えているように見える。
黒々とした光はまだマオリの瞳に宿っており、
焦点も合っているようだった。
人間どもがおれを死の鳥と呼ぶのは、
こんなふうに死にかけた時におれの姿が見えるからなのだろうか。
人間どものやることのえげつなさと言ったらない。
その点、おれはマオリに対してわずかに同情していた。
マオリは肩で息をしながら神社にたどり着いた。
石段に上の弟を寝かせると、
湧き水を見つけて夢中で飲んだが、すぐにむせて吐いた。
喉を焼いているのだろう。
おれはマオリの様子を目を細めて見つめた。
マオリはよろよろと上の弟の元へ戻った。
石段に寝かせた弟はすでに息絶えかけていた。
マオリにはそれがわからないようで、
自分の着物の袖を千切って湧き水で濡らし、
必死に上の弟の傷を冷やしていた。
ふらふらと、
何度も何度もマオリは湧き水と上の弟の間を行き来した。
そんな愚かな行為をおもしろがっておれは数えていた。
百まで続くかと思ったが、マオリは倒れた。
無理もない。
マオリにも死は近づいている。
第一に火で焼かれた傷、そして第二に、
奇病は間もなくマオリを襲うだろう。
マオリは仰向けになった。
おれはマオリと目があった。
もっとも気のせいかもしれない、人間に見えることはめったにない。
しかし、それにしてはマオリは
おれの姿をしっかり捉えているように見える。
黒々とした光はまだマオリの瞳に宿っており、
焦点も合っているようだった。
人間どもがおれを死の鳥と呼ぶのは、
こんなふうに死にかけた時におれの姿が見えるからなのだろうか。

