「これからどう戦うのですか。」
 
沈黙を破ったのはマオリだった。
皆のやつれた顔がいっせいにマオリに向く。

「おまえは、こんな時に次の戦いのことをすぐ考えられるんだな。」
 
原田があきれたように口を開いた。

「いや、えっと、沖田さんならそう言うかと思って。」
 
マオリは場違いなことを言ったのだと気づいて、慌てて弁解した。

土方はふっと息を吐き、握り締めた拳を解いた。

「そうだな、総司なら、そう言うにちがいねえ。」
 
そう言ってマオリにまっすぐ視線を向けた。

「ありがとうよ。」
 
役者のような整った顔が蘇った。
それだけで辺りの空気がふっと変わっていくのが感じられる。

「これから淀大橋を経て八幡へ向かう。
 苦しい戦いが続くが、おまえたち、ついてきてくれるか。」
 
鬼の副長と言われた土方にしては優しい響きのある言い回しだった。
古参の隊士たちは土方の元へ集まり、うなずきあった。
 
マオリはそれを見つめながら、
その中に沖田がいるところを想像せずにはいられなかった。

 
新撰組を始めとする前線部隊でマオリは連日、
鬼神と呼ばれる戦いぶりを発揮した。
 
刀を死神からもらったと、
ふともらしたことがいつのまにか広まり、
マオリは西軍からも白い刀の死神と恐れられるようになる。
 
しかし、東軍の指揮をとるお偉方は弱気のままであった。