五日。
新撰組は会津藩の別戦隊と宇治川堤防の千両松の付近で
最後となる白兵戦に臨んだ。
 
マオリは生き残った隊士たちと共に堤防の下で、
敵を待ち構えた。

「突撃―!」
 
その声を聞くが早いか、
マオリは堤防を駆け上がった。

湿地帯と宇治川に挟まれたこの地形で敵は兵を展開することが難しい。
あとは命がけで突っ込んでいくだけである。
 
マオリは、隊士たちに宣言したとおりに死番を務めた。

幕府軍のものたちの誰もがこの戦いが
もはや勝ち目の薄いものだとわかってきていた。
そのうえ、上からの指示はない。

いまだ戦い続ける者たちを見捨ててしまったのではないか、
そう想像するのは容易い。

それでも、新撰組が勢いを失わない理由の一つは、
そんな大きな目線で戦況を捉えないマオリの姿があったからでもあった。
 
ただ、目の前の敵を斬って進んで、
避けて斬って進んで、飛び上がって血を浴びて、
斬って進むだけの姿であった。

「退却―!」
 
マオリは振り返った。

その隙に斬りかかる敵を一振りで薙ぎ倒し、
辺りを見回した。
 
敵は、マオリたちの壮絶な斬り込みに対して壊滅状態まで来ていた。
退却と言われても、
最前線にいるマオリは一瞬でも止まれば刀が飛んでくる。

仕方なく、斬りかかって来た相手と剣を交えていると、
永倉の声がした。