フクロウの声

砲撃に苦しんでいた新撰組は、
マオリによって砲撃が不可能となった方角へいっきになだれ込んだ。
 
マオリに遅れてたどり着いた永倉が見たのは、
鬼神のように血まみれになりながら、
ただひたすら敵を斬り殺していくマオリの姿だった。
 
敵陣の前線は、もはやマオリ一人の手によって壊滅寸前にある。
しかし、永倉以下新撰組の隊士たちが斬り込めたのはそこまでであった。
 
新たな砲撃が加えられ、拠点である奉行所が炎上した。

「仲村!戻るぞ!仲村ァ!」
 
撤退を決めた永倉が出す指示はマオリの耳には届かないようで、
がむしゃらに敵に斬り込んでいる。
 
永倉は舌打ちして、マオリのもとへ駆けた。
 
もはや我を失ったかのように刀を振り回すマオリの正面に回りこみ、
永倉はマオリの刀を受けた。
 
ぎゃりぎゃりと鉄同士が火花をあげた。

「撤退だ・・・!刀を引け!」
 
永倉がその強力でマオリの刀を弾き飛ばすと、
マオリは刀ごと吹っ飛ばされた。
 
マオリは地面に倒れるとそのまま気を失った。

ほとんどおれの力を使わず、マオリは戦っていた。
自分で外したタガをマオリは戻すことができず、
気を失うことでやっと止まることができた。

永倉は刀をおさめ、
倒れたままのマオリを抱えあげておぶった。

マオリが娘だということは聞かされていたが、
持ち上げたその体は驚くほど軽かった。
 
永倉はマオリをおぶったまま退去した。
マオリはその背の揺れで我を取り戻した。