フクロウの声

敵に向けて開け放たれた門から、
永倉を始めとする新撰組の隊士たちが一斉に駆け出した。
地響きに負けぬ雄たけびが響き渡った。
 
マオリも白い鞘から抜刀し、
太陽の光を受けてきらめく刀を手に駆け出した。
 
門を出た途端に、左右から砲撃が開始された。

つんざくような爆音と共に、
舞い上がる土埃が視界を夜のように暗くした。
 
驚いてマオリは足を止めて身を屈める。
そのまま前を走っていった隊士の体が舞った。
まるで塵のように跳ね上がって地面に落ちた。
 
一瞬にして死んだ。

マオリの足元に転がった隊士の死体は胴を残すのみとなっている。

マオリは、初めて見る砲撃の凄まじさに足がすくんだ。

「何やってんだ!仲村ァ!」
 
永倉がマオリを呼ぶ。
その声が遠く、うわんうわんと反響して
マオリの頭の中でまで入ってこない。
 
敵が見えない。
 
刀を持ったまま、
かたかたと震えが足から上ってくる。

粉塵の向こうに火の手が見える。

赤々とのぼる炎は、かつてマオリの父と祖母、弟
を焼いた光景をマオリに思い出させた。

それはそのまま死の記憶である。
マオリは死が再び、自分を喰い散らそうと迫っていることを自覚した。