フクロウの声

敵の状況が掴めないまま突入する際には、
一番死の危険にさらされることから死番と呼んだ。

それぞれに腕に覚えのある隊士たちの顔を見渡しながら、
マオリは飛び跳ねる心臓をおさえつけ堂々と言い放った。

「任せたぞ。」

土方は、マオリの耳が赤く染まっていることに気づいていた。
マオリは土方に向かい、深くうなずいた。

年が明けてすぐ、慶応四年一月三日。

ついに均衡が破れ戦闘が始まった。
鳥羽伏見の戦いである。
マオリ数え十八の年のことだった。

新撰組は共に戦う会津藩においても、
銃火器の不足は明らかであった。

そのため白兵戦を余儀無くされた。
それが、どのような意味を持つのか、マオリは知るよしもなかった。

伏見奉行所の門は開かれようとしていた。

マオリは刀を構え、
少しずつ開かれて行く門をじっとにらんでいる。

さほど遠くない場所から、
聞いたことのない大きな地響きがこだましている。

マオリは、その不気味さに体が縮まる思いがした。
心に何度も描いたのは、
布団に突っ伏してむせび泣く沖田の背であった。
思い出すたびに縮こまったからだにぴしゃんと芯が通る。

「仲村、始まるぞ。」
 
そばにいた二番隊組長の永倉が言った。
マオリはその言葉にわずかにうなずくのが精一杯であった。