声を押し殺して泣く沖田の震える背中を見て、
マオリは苦しくなった。

沖田の悔しさ、悲しさがマオリの体に入り込んで来て、
病のように苦しめた。
知らず知らずのあいだに、血が滲むほど唇を嚙みしめていた。

「私が戦います。」
 
マオリは低く、声を発した。

沖田の呼吸が変わったのが、
背中の震えが止まったことでわかった。

マオリはつっぷした沖田をまっすぐ見つめたまま、
そっと、骨ばった背中に触れる。

その無念さを吸い上げるように手のひらを添える。
 
沖田は何も言わない。
マオリはそのまま握り締められた沖田の乾いた拳をそっと包んだ。

この人にどうか、もう一度刀をとらせてあげてください。

マオリは祈った。

死神を背負ったマオリが神に祈るのも滑稽であるかもしれないが、
何にすがっていいのかわからなかった。

いや、すがることさえマオリにはできないことだった。
マオリが頼みにするものは唯一つ。
白い鞘の刀だけである。

いやおうなく、
死の足音が近づいてくるのを予言するかのように、
あの啼き声が聞こえてくる。

ホウ、ホウ、ホウ、と、フクロウの声が。