「私は・・・何をしているんだ。」
 
沖田は布団を強く握り締めた。
掴む布地にゆれた線が浮かび上がる。
手の甲にはくっきりと骨のかたちが見てとれ、
それを這う青い筋が怒りをありありと映し出していた。

マオリは沖田が放り捨てた手紙を拾い上げた。

有松のおかみから手習いは受けたものの、
マオリには判読できない文字がいくつかあった。

「命に別状はないと書いてあるようですが・・・。」
 
マオリは自分が読み取った内容に自信がなく、
恐る恐る沖田にたずねた。

「そういう問題ではないんだ。
 近藤さんを守れなくて、この体に、
 この命に何の意味があるというんだ。」
 
沖田は吐き捨てるように布団に向かって叫んだ。
半分泣いているような悲鳴のような叫びだった。
 
ぽたりと、布団に滴が落ちた。

「私はもう・・・。」
 
沖田は頭を布団にこすり付けた。
背中が震えている。

修羅となり刀を振るい続けたのは、
新撰組のためだと言った。

新撰組とは沖田にとって、
兄のように慕う近藤勇そのものだった。

病に伏せる間に、その近藤が撃たれた。
本来であれば、近藤を狙う賊をいの一番の見つけ出し、
鮮やかな疾風となって斬り伏せるのは沖田のはずであった。

その近藤が自分の居ぬ間に襲撃されたとあっては、
どれほど悔しいことだろう。
無念であろう。