マオリは上の弟を抱きかかえて外へ飛び出した。
「行くな!マオリ!」
父が叫ぶ。
「いぎゃあっ。」
着物に燃え移った火に上の弟が悲鳴をあげる。
慌てて火を消そうと手ではたいたが、
火は弟の髪に燃え移った。
「娘が出てきたぞ!」
燃え上がる火に照らされて、
憤怒の表情を浮かべた村人たちが見える。
じりじりと男たちはマオリに近づいた。
マオリは上の弟をかばいながら、男たちを見据えた。
背中には今しがた飛び出した炎が
焼き尽くさんとばかりに迫っている。
後退は死を、
しかし目の前の男たちからも死を突きつけられる。
「来るな!奇病がうつるぞ!」
マオリはありったけの声で叫んだ。
炎と煙で喉が焼けるように痛い。
それでも渾身の叫びは村人に届いたようで、
それ以上近づくのをやめた。
上の弟に燃え移った火はなんとか消えたものの、
激しく泣いている。
顔はやけどをしているようだが、
煤で黒くなっており傷が見えない。
どろりとした感触は血であるだろうことは確かだ。
マオリは上の弟を抱きかかえ直すと、横に数歩にじり進んだ。
後ろで家が焼け落ちていく音が聞こえる。
祖母の唱える念仏が乾いた悲鳴に変わった。
じりじりと、村人との距離を保ちながら、マオリは決死の脱出を試みた。
「行くな!マオリ!」
父が叫ぶ。
「いぎゃあっ。」
着物に燃え移った火に上の弟が悲鳴をあげる。
慌てて火を消そうと手ではたいたが、
火は弟の髪に燃え移った。
「娘が出てきたぞ!」
燃え上がる火に照らされて、
憤怒の表情を浮かべた村人たちが見える。
じりじりと男たちはマオリに近づいた。
マオリは上の弟をかばいながら、男たちを見据えた。
背中には今しがた飛び出した炎が
焼き尽くさんとばかりに迫っている。
後退は死を、
しかし目の前の男たちからも死を突きつけられる。
「来るな!奇病がうつるぞ!」
マオリはありったけの声で叫んだ。
炎と煙で喉が焼けるように痛い。
それでも渾身の叫びは村人に届いたようで、
それ以上近づくのをやめた。
上の弟に燃え移った火はなんとか消えたものの、
激しく泣いている。
顔はやけどをしているようだが、
煤で黒くなっており傷が見えない。
どろりとした感触は血であるだろうことは確かだ。
マオリは上の弟を抱きかかえ直すと、横に数歩にじり進んだ。
後ろで家が焼け落ちていく音が聞こえる。
祖母の唱える念仏が乾いた悲鳴に変わった。
じりじりと、村人との距離を保ちながら、マオリは決死の脱出を試みた。

