空中で上段に刀を構え、
さきほど一撃をかわした男に向かう。
　
マオリのあいた胸元めがけて男の刀が伸びる。

切っ先の寸前でマオリは身をひねり、
一瞬の剣閃が散り、着地と同時に光の速さで男の胴を抜いた。
　
男はうめき声と共によろめいた。
すかさずおれは後ろをとって、袈裟斬りに斬って男を倒した。
　
あと二人。
おれは舌なめずりをするように、
刀についた血を一振りして構え直した。
　
残りの二人は、あっさりと倒された男の様子にたじろぎ、
じりじりと後ずさりを始めた。
　
おれは容赦ないと目で凄み、その間合いを詰めていく。

「沖田総司がいないのならば、用はないわ！」
　
一人の男が言い放つやいなや、二人は背を向けて逃げ去った。

孝子が怯えた目でマオリを見ている。
　
おれが視線をやると、小さく悲鳴をあげて目を逸らした。

「もう、ここには来ないと思いますよ。」
　
マオリは孝子を安心させようと、声に出してみた。
顔に少しばかり返り血がついていた。
　
マオリは手でぬぐって、
目を逸らしたままの孝子から離れた。