ホウ、ホウ。
 
マオリはあたりを見回した。
フクロウの鳴く声が聞こえた気がした。
相変わらず夜目がきき、細かく降る雪の向こうに目を向けた。
 
重く雪を乗せた松が黒々と枝を張っている。
 
またしても、気のせいだと一歩を踏み出したマオリは
足の裏にずるりとした感触を覚えた。
 
その感触にマオリは足元に目をやる。
 
黒々とした血が廊下一面に闇を広げている。

「・・・っ。」
 
マオリは驚き後ずさりした。
すると、血の海はなくなった。
 
冷たい廊下を確かめるように足を床に擦った。
湿った木がそこにある。
 
バサリ。
 
鳥の羽音が聞こえた。
 
今度はマオリの手に生暖かい液体が触れた。
驚いて、恐る恐る両手を見る。
 
真っ赤に血に染まった手が目に飛び込んできた。
 
死神を背負って、何をしゆう・・・。
 
あの声がこだます。


「いやぁっ。」
 
マオリは自分のあげた小さな悲鳴で目を覚ました。
ぐっしょりと背中が汗で湿っている。
 
そこは、マオリに与えられた部屋であった。
 
夢か。
 
マオリは汗をぬぐって、その手を広げて見た。
 
村で鍬を振るっていた時とは違う、
剣だこのできた小さな手がそこにある。