フクロウの声

父は熱があがり、立ち上がることもできなくなっていた。
休む間もなく下痢と嘔吐が父を襲う。

みるみるうちに血の気が失せていく様子は、
栄治の死に際とまったく同じ様子だった。

「そだなこと・・・。」

「おらたちは奇病を村に持ち込んだ。死神だべ。」

父は悲鳴のように泣きながら、
顔を奇妙にひきつらせて笑った。
野良仕事で焼けた黒い肌に奇妙な影の皴が寄った。

村人の怒号と共に、マオリの家に火が放たれたのはその直後だった。

「きゃああっ。」

マオリは火のついた戸から飛びのいた。
上の弟がたまらず泣き出す。
火はあっという間に、簡素な作りのマオリの家を包み込んだ。

「逃げるべ!」

マオリは父と祖母の手を引こうとしたが、二人は頑として動かない。

「出て行っても、そこで殺されるだけだ。」

父はそう言って首を振り、
祖母は変わらず固く目を閉じて念仏を唱えるばかりだった。

あっという間に火は家を飲み込み、
夏の太陽の中に放り込まれたような熱が襲う。

外から村人たちの怒号、はじける火が燃え上がっていく音、
上の弟の泣く声、祖母の念仏・・・。
それらがマオリを異様な怒りへと導いた。
「マオリ、すまねえ・・・。」

父が汚れた顔をくしゃくしゃにして謝った。
涙が垂れている。

マオリは体の奥底から這い上がってくるものを感じた。
絶望と怒りだ。