気を失った沖田は近藤の妾宅へと運ばれた。
 
もはや、屯所に寝かせておくことができないほどに、
沖田の病状は重くなっていた。
 
マオリは沖田の付き添いとして共に妾宅に寝起きすることになった。
 
藤堂は、沖田の刀を受けて死んだ。
 
近藤も土方も、藤堂が沖田の刀によって倒れたことには
複雑な表情を隠せないようであった。
 
ますますこけた頬が、辛そうな呼吸のたびに微かに動く。
マオリはあれからほとんど目覚めることのない沖田を枕元で見ていた。
 
あの瞬間まで、藤堂よりも沖田のほうが確実に死に近いところにいた。
一体、この病に蝕まれた体のどこに、
あれほどの激闘を戦い抜く力が残されていたというのだろう。
 
外は雪がちらつき、朝になると積もっていた。
 
時々、目覚める沖田は歩くことすらままならず、
マオリの肩を借りて厠まで用を足しに行った。
 
屯所にいた時よりも素直にマオリの看病を受ける沖田が、
マオリには悲しくも思えた。
 
マオリは沖田が眠っているのを確認し、
自室へと戻る廊下を歩いた。
 
暗い闇夜にしんしんと音もなく雪が降り続いている。
冷たさのこみあげてくる足を止め、マオリは空を見上げた。
 
土方から出動の命はなく、
有松で過ごした平穏な日々以来マオリは刀を握らない数日が続いていた。
 
ふと、マオリは鼻をひくつかせた。
冷気が鼻をついて痛い。
 
血のにおい・・・。
 
マオリは自分の手のひらを開いてにおいを嗅いだ。
 
気のせいか。
 
思い直した。
毎晩のように血のにおいに囲まれていたせいか、
どこからともなく血のにおいがした気がした。