しんと澄んだ夜の空気が天上まで続いている。
よく晴れた月夜だった。
男物の着物は動きやすく、マオリの足取りは早かった。
伊東が通るはずになっている路地の陰に身を潜め、
白い息を吐きながら時を待った。
静かな月を見上げて、
おれはマオリの中に潜り込んだ。
十分すぎる月明かりは辺りを昼間のように見せる。
その先にさらに明るく揺れる提灯の光が近づいて来る。
酒がまわって上機嫌なのか、伊東は朗々と歌っている。
護衛の者はいない。
一人である。
おれはゆっくりと立ち上がった。
腰の刀に手をかけて、ゆらりと伊東の前に出た。
伊東の歌声が止んだ。
「何者だ。」
異変に気づいた伊東は、
立ち止まって目をこらした。
おれは名乗らずに身を低く構え、抜刀の体勢に入った。
「近藤の手のものか。」
提灯の灯りを消して打ち捨て、伊東は刀を抜いた。
おれは飛んだ。
木の枝から真っ直ぐに獲物めがけて飛ぶように、
一瞬で伊東の間合いの中に入る。
と、同時に刀を抜く。
よく晴れた月夜だった。
男物の着物は動きやすく、マオリの足取りは早かった。
伊東が通るはずになっている路地の陰に身を潜め、
白い息を吐きながら時を待った。
静かな月を見上げて、
おれはマオリの中に潜り込んだ。
十分すぎる月明かりは辺りを昼間のように見せる。
その先にさらに明るく揺れる提灯の光が近づいて来る。
酒がまわって上機嫌なのか、伊東は朗々と歌っている。
護衛の者はいない。
一人である。
おれはゆっくりと立ち上がった。
腰の刀に手をかけて、ゆらりと伊東の前に出た。
伊東の歌声が止んだ。
「何者だ。」
異変に気づいた伊東は、
立ち止まって目をこらした。
おれは名乗らずに身を低く構え、抜刀の体勢に入った。
「近藤の手のものか。」
提灯の灯りを消して打ち捨て、伊東は刀を抜いた。
おれは飛んだ。
木の枝から真っ直ぐに獲物めがけて飛ぶように、
一瞬で伊東の間合いの中に入る。
と、同時に刀を抜く。

