村での出来事がよみがえる。
毎日顔を合わせ、
収穫や田植えの時期にはお互いの野良仕事を手伝いあった村人たちが、
鬼の形相でマオリの家を取り囲んだ夜を。
松明で赤々と照らし出された憎悪の表情は、
今もマオリの中に鮮明に焼きついている。
しかし、目の前で布団に乗せた両手を見つめる沖田は、
悲しそうに沈んで見えた。
「もう膳を下げていいよ。」
沖田は膳にほとんど手をつけていないまま、
布団へ潜り込んだ。
「もう少し召し上がってください。」
マオリは背を向けて寝ている沖田に向かって言った。
「君はさ、選んだのかい?」
くぐもった沖田の声が布団の中から聞こえた。
「何のことですか?」
唐突な沖田の問いかけに、
膳に触れかけた手をマオリは引っ込めて聞き返した。
「君は、ここにいることを選んだの?」
ごろりと寝返りを打って、沖田がこちらを見た。
光のない双眸がマオリを見つめる。
「選んだことなど、一度もありません。」
マオリは思いついたままに返答した。
「そうだと思ったよ。
平助は選んだんだ。だから、いいと思うことにする。」
沖田は苦しそうに息を吐き、天井を見上げて目を閉じた。
毎日顔を合わせ、
収穫や田植えの時期にはお互いの野良仕事を手伝いあった村人たちが、
鬼の形相でマオリの家を取り囲んだ夜を。
松明で赤々と照らし出された憎悪の表情は、
今もマオリの中に鮮明に焼きついている。
しかし、目の前で布団に乗せた両手を見つめる沖田は、
悲しそうに沈んで見えた。
「もう膳を下げていいよ。」
沖田は膳にほとんど手をつけていないまま、
布団へ潜り込んだ。
「もう少し召し上がってください。」
マオリは背を向けて寝ている沖田に向かって言った。
「君はさ、選んだのかい?」
くぐもった沖田の声が布団の中から聞こえた。
「何のことですか?」
唐突な沖田の問いかけに、
膳に触れかけた手をマオリは引っ込めて聞き返した。
「君は、ここにいることを選んだの?」
ごろりと寝返りを打って、沖田がこちらを見た。
光のない双眸がマオリを見つめる。
「選んだことなど、一度もありません。」
マオリは思いついたままに返答した。
「そうだと思ったよ。
平助は選んだんだ。だから、いいと思うことにする。」
沖田は苦しそうに息を吐き、天井を見上げて目を閉じた。

