フクロウの声

「なぜですか?」

「総司はおまえを見て、自分と似ていると言った。
 死神が憑いていると。」
 
死神。

沖田にはマオリに常に身を寄せる白いフクロウの存在が見えていた。

なぜ沖田には死ぬ間際にしか見えない
その死神の姿が見えるのか。
それもマオリは不思議であった。

夕餉の膳を持って、マオリは沖田の部屋へ向かった。

「沖田さん。膳をお持ちしました。」
 
マオリは有松で習ったように障子の前で手をついて、
薄暗い部屋の中へ声をかけた。

返事がないのでそのまま障子を開けて中に入る。

「ああ、君か。」
 
布団に横になっていた沖田が薄く目を開けた。

「おやすみでしたか。」
 
マオリは障子を閉めて膳を運びこんだ。

「いや、うつらうつらしていただけだよ。
 最近は眠ろうと思っても眠れないんだ。」
 
苦しそうに沖田は息を吐いた。
まるで体の中のくもの巣から糸に絡めとられた蝶が
ぱたぱたともがくような浅い呼吸であった。
 
初めて会った時よりも痩せている気がする。
鷹のような鋭さは寝ている沖田からは感じられない。