フクロウの声

坂本には、マオリの背中で残酷な白い羽根を広げる
フクロウの姿が見えていたのであろうか。
 
死にそこねたマオリは体を死神に預けたまま、
人を斬り続ける。

マオリは信じるだけだった。

自分の居場所がそこにあると、
求められる場所はここにあると・・・。

「わかりました。」
 
マオリは淡々と抑揚のない声で返した。

落ち着き払ったマオリの様子に永倉は驚いたように、
おせじにも剣客には見えないマオリの姿を眺めていた。

よく見ても少年。
それも元服もまだの子供に見えてもおかしくはない。

黒々とした髪が余計そう見せるのか、
透き通るように白い肌は、
どこかのお屋敷の奥深く大切に育てられたようにも見える。

さる大名から預かっている若君といえば、
なるほど世間知らずのお坊ちゃんと見えなくはない。

「それから。」
 
土方が急に柔らかな声色を作る。

「総司の面倒を見てやって欲しい。
 あいつは病を隠して隊務に出ようとする。
 今は養生が必要な時だ。
 総司もおまえの世話なら受けるかもしれない。」
 
マオリは不思議に思った。