フクロウの声

「総司が不在の時は新八に一番隊を率いてもらっているが、
 おまえの助けがあれば、
 総司もまた組長として働けるだろう。」
 
土方は近藤とうって変わって、表情を変えないまま告げる。

ここでもまた土方はマオリを利用しようとしている、
うっすらとマオリにもわかることではあったが、
それ以上にこれほどに大切にされる沖田がうらやましくもあった。

「さっそくだが、任務を与える。」
 
土方の低い声がいっそう低くなった。

マオリは顔をあげて土方を見つめた。

まるで役者のような端正な顔立ちをきりりと引き立たせるのは、
土方自身が放っているなんともいえない厳しい空気だった。

「つい先日まで新撰組にいた隊士たちが、
 伊東甲子太郎という輩にに率いられて隊を離れた。
 やつらは御陵衛士と名乗っている。」

「早い話が分裂さ。」
 
永倉がマオリに手のひらを見せ、補足した。
剣だこだらけのたくましい手のひらであった。

「建前上、分離を許したが、
 潜伏させた斉藤一という隊士から、
 やつらが近藤局長の命を狙っていることがわかった。
 こうなった以上、そのままにしてはおけん。」
 
近藤は目を瞑ったまま、深く土方の言葉にうなずいた。