フクロウの声

「おいおい。それは結局俺が面倒見るってことじゃねえか。」
 
そう不満そうに言ったのは永倉だった。

「それは、近藤さんも俺も考えてはいるさ・・・。」
 
土方はマオリをチラリと見やった。

マオリは何について話されているのか事情が飲み込めず、
黙って見守っているしかなかった。

「マオリ、総司は・・・沖田総司は肺を患っている。」
 
永倉は土方からマオリに伝えられた言葉を悔しそうに聞いていた。

「え・・・。」
 
マオリは初めて小さく声をもらした。

そういえば、有松の縁側で苦しそうに咳き込んでいる姿を見た。

その前に襲撃を共に戦った時にも
蜘蛛の巣を引きちぎるような嫌な咳だった。

あれは肺を患っていたのか。

「近頃は寝込むことも多くなってな。
 総司は君をいたく気に入っているようだから、
 きっと喜ぶはずだ。」
 
近藤はここに姿のない沖田を思っているようだった。

「俺にとっちゃ総司は弟みたいなもんだ。
 思うように刀の振るえなくなった総司を見るのが辛くてな。
 いや、身内の話で申し訳ない。」
 
悲しそうに太い眉を下げてマオリに謝る近藤の姿は、
彼の実直さを感じさせるものがあった。