フクロウの声

父は青ざめた。
男たちの表情が見る見る憤怒に変化していく。
囲炉裏の中でぱちぱちと火がはじける音が響く。

「おめえ、騙したな!」

男の一人がひざを立てると、
父はますます青くなって抜けかけた腰のまま外に這って出た。

膝ががくがくと震えて思うように動かない。
なんとか立ち上がって、父は走った。

「待て!」

男衆があげる声が響く。
父は逃げた。

もつれる足を右足、左足と交互に前に出す。
息があがって、横腹が痛い。
野良仕事で鍛えた太腿も、ひきちぎれそうにきしんでいる。

父は恐る恐る立ち止まって振り向いた。

遠くに松明が揺らめいているのが見える。
男たちが追って来ている。

「うわあああああっ。」

父は我が身に起こった恐怖に今更ながら恐れおののき、叫び声をあげた。
「逃げろっ!」

家の戸を開けて父は叫んだ。
中にいたマオリと祖母、それに上の弟は何事かと目を丸くした。
父の異変に一番に気づいたのは祖母だった。

「おめ、まさか!」