「これまでの働き、ご苦労であったな。」
 
エラの張った男が口を開いた。

どうやらこの男は、
マオリのことを知っているらしかった。

「この人は近藤勇さんだ。新撰組の局長をしておられる。」
 
土方がエラの張った顔の男を近藤勇と紹介した。

つまりはこの男は山崎の話に出てきた
新撰組を束ねる総大将ということだ。

「仲村織之助と申します。」
 
マオリは頭をさげて挨拶をした。

「仲村織之助か。しゃれの効いた名前をつけたな、総司は。」
 
近藤勇が満足そうにうなずいた。

「ちょっと待ってくれ。
 俺には話がまったくわからない。
 総司もこいつを知ってるってのか。」
 
永倉が近藤に向かって手をあげた。

その仕草は子供が年長者に質問をする様子のようにも見えて、
ますます変わった男だとマオリは思った。

「先日、土佐の坂本を暗殺したのはこいつさ。」
 
土方が声をひそめて答えた。
 
坂本、そういえば近江屋の入り口で斬った男は、
あの縮れ毛の男をそう呼んでいたと思い出す。