長い廊下を歩き、
目的の部屋の障子の前で永倉は止まった。
そしてそのままガラッと障子を開ける。
 
有松では膝をつき、
片手ずつ順を追って障子に手を添え開けるよう
おかみに習っていたマオリは、その豪快さにあっけにとられた。

「土方さん、連れてきたぜ。」
 
部屋の中には土方がいた。

その隣には顔の大きな男が座っている。
エラの張り出した顔が横に広く見せている。

鼻筋の通ったかたちのよい顔立ちをしている土方と比べると
随分野性味溢れる武骨な雰囲気の男である。
 
エラの張った男は怯えた表情のマオリを見て、
歯を見せてにっと笑ってみせた。
大きな口である。

「おう、新八。ご苦労だったな。」
 
土方にうながされ、マオリは部屋に入る。

「じゃ。」
 
と言って永倉は廊下を戻ろうとした。

「待て。新八もここで話を聞いておけ。」
 
土方が永倉を呼び止めた。
永倉は不思議そうな顔をしながらも障子を閉め、
その前にどかっとあぐらをかいた。