重い足取りで階段をおりる。

わらじの裏は血でずるずるになっていた。
足を滑らせないように気を配りながら土間におりる。
 
土間では太った男が倒れたままだ。
 
マオリは急に強烈な吐き気に襲われた。

全身の内側がひっくり返って出てくるかのような
こみあげる痛みであった。
 
その場にしゃがみ込み、
マオリは胃の中のものをすべて吐いた。

縮れ毛の男の見開かれた目が焼きついている。

それはおれも同じだった。

おれは人間どもの素性など知るよしもないが、
おそらく今夜斬り伏せた男は、ただものではないのだろう。
強烈な力を放っていた。
 
殺してはいけない人を斬ったのではないか・・・。

そんな思いがマオリの中にわきあがる。
しかし、これ以上の長居は危険を呼びかねない。

マオリに甕の水を飲ませると、
来る時に羽織っていた紅色の着物を頭からかぶり、
うっすらと雪の積もった路地へ出た。