「苦しいち・・・。」
 
縮れ毛の男は泣くように笑った。

「悔しいほうが・・・大きいきに。
 こん・・・国が・・・新しゅうなる・・・を、
 見ずに・・・死にとう・・・ない・・・。」
 
マオリはじっと、息絶え絶えに語る男を見つめた。

「死神・・・背負って、何をしゆう・・・。」
 
マオリは改めて男を見た。

「中岡・・・。」
 
先ほど斬り捨てた男に向かって縮れ毛の男が笑いかける。
青白い魂はもう男の体から浮かび上がりつつある。

「死神が見えるぜよ・・・。
 わしは、もう・・・脳をやられたんかのう・・・。
 だめじゃ・・・。」
 
そこまでを途切れ途切れに言うと、男は気を失った。
 
慣れない狭い部屋の中での戦闘に、
マオリは大量の返り血を浴びた。

マオリだけではない。
部屋の壁、天井、畳のすべてがおびただしい量の血で染まっていた。
 
ほのかな月明かりが血だまりの中できらきらと光った。
 
縮れ毛の男からふわりと抜け出た魂が、名残惜しそうに漂っている。
 
マオリは止めをささずに部屋をあとにした。