白銀色の花卉‐ギンイロノカキ‐

 

振り返った、その顔を見て私は確信した。


「享……ちゃん……?」


何が起きたのか、よく解らなかったけど。

気がづいたら、さっき聞こえていた音がぴたりと止んでいて、青白い化け物も消えていた。

夢でも見ていたんだろうかと思うくらい、いつもと変わらない風景に私は茫然とした。


「何、今の……」


「それより、何でお前はここを歩いてるんだ?」


「え、うちに帰ろうと……」


「待ってられなかったのか」


「お母さん忙しいのかと思って……」


眉間に皺を寄せた彼は、とても大きな溜め息をついていた。