君一色




「―――あの、私……本当に帰るんで大丈夫です。」

「どこに?」


「家にです。」

「だから、家ってどこ?」

なかなか本当の事を言い出さない彼女に
思わず強くそう聞くと……
諦めたのか、ふぅっと肩を落とした。


「……家なんてありませんよ……」


さっきまでの無表情を崩すと
今度は弱々しく、小さな声でそう言った。

次第に、肩が震え出す。

「………っ!」


………しまった。泣かせた―――。