ここから遠くに見える、黄色い屋根のアパートを差す。 …………絶対今適当に答えた。 しかも 彼女はとことん嘘が下手だった。 その上――― 運が悪い。 「残念でした。あれ、俺のアパートだから。」 “えっ”と小さく声をあげたのと同時に 俺は彼女の手首を掴んだまま歩き出した。 「えっ………何――?」 「いいから着いてきて。――――はい、コレ」 掴んだ手を離そうとする彼女に、今までやり場のなかったピンクの傘を差し出すと 大人しくそれを受け取り、抵抗をやめた。