―――思い出せないなぁ……

この店も、あの店員も

確かに記憶にはあるのに―――。




ボーッと、レジの方を見つめていると
電話を終えた鼓乃実が戻ってきた。

「……ごめん和音!兄貴帰ってきたみたいで…」

「お兄さん!?早く帰らなきゃ!ごめんね、寄り道させちゃって……」


―そういえば、もともと駅前に行くはずだったんだ……

「いいよ!――明日もう一回着いてきて!」


申し訳ない気持ちで“じゃあね”
と言うと、
鼓乃実は笑って“バイバイ!”
というと、足早に店から出ていった。