それにしても、困った。

「頼むから、起き上がって、顔上げて。これ、俺がもらっちゃうよ。」

そう言うと、彼女はいきなり顔を上げた。

「私のですっ!!!」

「…!」

なかなか顔を上げなかった理由が分かった。

彼女は、泣いていた。

「………怪我した?」

「いえ、大丈夫です。気にしないで下さい……元から、泣いてたんで…。」

そう言いながら一人で立ち上がり、俺から袋を受け取る。

「すみませんでした。………では。」

泣き顔を見られたことが気まずかったのか、一度も俺と目を合わせることなく

彼女は去っていった。