「夕飯買いにコンビニ行くけど、なんか要る?」

定時になるといつも夕飯を調達しに岡野は席を立つ。コンビニで焼きそばパンやらインスタントラーメンを買ってきては腹ごしらえをし、夜からもう一仕事頑張るのがいつものパターンだ。社長が事務所にいる時は気を利かせて宅配モノを取ってくれることもあるが、たいていは外回り営業でそのまま帰ってこないことが多い。

「やったー☆当然おごりだよね」

「利子付でいいなら、立て替えてやるぞ」

相変わらず口の減らない男だが、1人でさっさとコンビニに買いにいかず、私に一声かけてから行くところは気配りのできる男だと認めてやろう。

「うーん…。やっぱいいや。家に帰ればご飯あるし」

「あっそう?」

そういいながら上着を羽織って、行ってきますと事務所を出て行った。フロアに1人残された私は、篤彦のことが浮かんできた。おもむろに携帯を取り出し、メールを打つ。

『今日も遅くなりそう。夕飯どうした?もう食べた?』

一応朝出かけるときに夕飯を準備してきた。ご飯は予約炊飯のスイッチを入れてあるので炊けているはずだし、おかずもラップをかけて食べるばかりにしてある。レンジで暖めるだけで夕飯は食べられるようにしてある。

篤彦の料理音痴は筋金入りだ。
唯一作れるのはカップに入ったインスタントラーメン。袋タイプのインスタントラーメンになるともうぎりぎり作れない。以前、一度挑戦したことがあるのだが、化薬ソースを入れるタイミングが解らず、味の無いラーメンを作ってしまってから、あまり積極的に作りたがらない。私がご飯を準備できない時は、コンビニで調達するか、お弁当屋や牛丼屋のお世話になる。

そんな篤彦のご飯の心配を、私はいつも夕方になるとする。