WEBデザイナーという仕事は、結構過酷である。

朝は一般企業と同じ様に9時から始まるが、終わりはフレックスタイム制。
つまり、残業三昧だ。もちろん残業代なんて出ないほうが普通である。大きな広告代理店で務めていたらもう少し優遇されるかもしれないが、うちのような社長と社員二人なんていう小さなデザイン事務所ではなかなかそこまでの待遇は難しいものがある。

とてもいい条件で働いているとは思えないけれど、会社を辞めるつもりは無い。勿論残業代が出てくれれば嬉しいにこしたことはないが、給与だけでは得られないものも沢山ある。クリエイティブ業界で働いている人は、精神的なメリットやプライドをしっかりと持っていて働いているように私は感じている。

毎日の帰宅も遅いのが常識。おそらく女性の場合は、結婚していたり、子供がいたら、働いていく事は難しいだろう。間違いなく普通の会社勤めの旦那より帰りは遅いし、子供の幼稚園のお迎えになんて間に合うはずはない。

男性クリエイターに比べ、女性クリエイターは短く太く業界で働くしかないように私は思う。そういう将来を考えている人が多いのか、20代前半層では、女性クリエイターの方が活気があると私は思う。

私もそのうちの1人かもしれない。毎日終電近くまで残業し、家に帰れば、風呂に入って寝るだけ。朝起きたらまた会社だ。圧倒的に会社で過ごす時間の方が多い。

下手したら、彼氏と過ごす時間より、岡野と事務所でもくもくと机を並べて作業している時間の方が多い気がする。…笑えないが、それが現状だ。

「…今日も、終電帰りかなぁ…」

就業規則では6時が定時だが、そんな時間に退社した事は無い。社長の趣味なのか、いまどきアンティーク価値があるのではないかと思うほどの古臭い鳩時計が会社の壁に飾ってある。

まじめに働く時計の中の鳩は、きっかり6回鳴いて定時を知らせてくれるが、役目もむなしく扉がパタンと閉まって、姿を隠した。まだ今から彼の姿をあと3,4回は少なくとも見ることになりそうだ。