初恋インマチュア


「はい残念ー!大人しく後ろに乗ってもらいます」


倒れそうになった私の体を支えながら高橋くんが満足そうにそう言う。


「……お願いします…」

「よろしい!」


高橋くんに支えてもらいながら自転車の後ろに乗せてもらった。


「じゃ、ちゃんとつかまってろよ」

「お願いします」


* * * * *


いつも20分かけて歩いている道のり。

高橋くんは物凄いスピードで自転車を漕ぐから、落ちないように必死につかまって道案内をするのは少し大変だった。

だけど、なぜかとても楽しくて、気が付いたらあっという間に家に着いていた。


「きょ、今日は、本当にありがとうございました…!」


自転車から降りて、門の前で高橋くんにお礼を言うと、


「別に。じゃあまた明日な」


高橋くんは短くそう言って、私の頭をぽんぽんと撫でると、自転車に乗って今来たばかりの道を引き返していった。


「…家、反対方向だったんだ……」


どんどん小さくなっていく背中が見えなくなるまで、私は不思議な気持ちで見つめていた。