それにしても、なんで腕掴まれてるんだろう…


すると、彼は急に立ち上がった。


背高い…。


「お前、名前は?」


口を開いたと思ったら、まさかの質問。


「えっ…」


「だから、名前」


彼がまた眉間にしわを寄せる。


言わないと危ない…


「は、灰原伊織…です」


なんとか声を出し、名前を言った。


「伊織な」


彼はにやりと笑う。


ぞくりと背筋が凍る。


「すみません!聞くつもりなくて…」


きっと、電話の会話聞いてたから怒ってるんだ…。


知らないやつに別れ話聞かれるなんて嫌だよね。


「別に。聞かれても気にしない」


えっ、普通は気にするんじゃないの?


それより、早くこの場を離れたい。


ううん、この人から逃げたい。


だけど、いまだに腕はがっちり掴まれている。