俺は踵を返して歩き出す。



「…まだ、こんなにも好きなのに」


呟かれた言葉に聞こえない振りをして。

俺は逃げるように歩いた。




笑った顔が好きだった。


俺を呼ぶ声が好きだった。


俺の腕に収まる温もりが好きだった。


柔らかな髪も、触れたくなる肌も、キスしたくなる唇も、全部好きだった。




好きだったんだ。