――生来、人間の目は『動きのあるもの』『光っているもの』へと注目する習性がある。
これは、殴り合いの時でも同じ。
人間は無意識の内に、『動いている拳』や『自分の繰り出した蹴り』の方向へ視線を向けているものなのだ。
そして苓は――意識的にやっている事かどうかは知らないけれど――私の視線の方向を特定する事で、次に私が攻撃する場所を見定めている傾向があった。
……つまり苓は、私の視線の方向を元に、次に来る攻撃を予測していたのだ。
(だから――あえて私は、それを逆手に取る)
視線を、苓の目に固定する。
その上で、まるで風景を見るかのように自分の視野を広く保ち、相手の攻撃を全て避ける。
……結果
「くそっ…どうなってんだよ!」
苓は私の攻撃を予測できなくなった。

