「ねぇ、明日香。」
「何?」
「達也くんがここに来たらあなたはどうするの?」
「・・・・。」

樹里が言いたいこともわからなくもない。
要するに、達也くんがここに迎えに来たら素直に仲直りして帰るのかってことだと思う。

「明日香は頭がいいから、私が何を言いたいかくらい理解できるよね?」
「・・うん」
「じゃあ、どうすべきかは自分で考えなさいね」
「うん、わかった」

翌日まで私は待ってみたけど達也くんはここに来ることはなかった。
私は一度、仕事のこともあるからと家に戻ったのだ。
家に着くなり私は驚愕を露わにした。
私の家の玄関前には、リュウを抱いたまま達也くんが座り込んでいたからだ。

「・・・な・・何してんの・・?」
「・・おかえり。」
「どうしてここにいるの・・?」
「待ってた。」
「どうして!?」
「リュウを一人にするのもアレだし、それに、リュウを一人にして探しに行ったら明日香怒るだろうから」
「だからここで待ってたの?」
「うん。」
「いつから?」
「昨日明日香が飛び出していってからずっと。携帯にかけたりメール送ったりしながら待ってた。」

・・・私は、この人が好き。
電卓男でも構わない。
私はこの人が大好きなんだ・・。


「ごめんね・・達也くん・・。寒かったよね、中はいって」
「ありがとう、明日香は怒ってないの?」
「怒ってないよ。達也くんは怒ってないの?」
「怒ってない。」
「そっか。」

部屋に入るなり、達也くんはリュウを放してその場に倒れた。

「達也くん!?」
「あれ・・?」

達也くんのおでこに手を当てると、かなり熱かった。

「熱あるじゃない!ベット使っていいから寝てて!」
「明日香は・・?」
「仕事なら休むから!」
「それは・・だめだよ・・」
「そんなこと言ってる暇あるならベット行ってください」
「明日香は・・優しいな・・」
「もう!しょうがないな・・」

立てそうにない達也くんをベットまで肩を貸してあげる。

「無理しないで今日は泊まって行きなよ」
「・・悪いよ、大丈夫。2時間くらいで帰るよ」
「馬鹿なの?2時間で治るわけないでしょうが!」

いいから泊まっていきなさいよ、と言って病院に連絡をした。
子供もいないので、私が具合が悪いことにして・・。

風邪で熱が出てるんだと思うので・・と言うと、病院にきて薬もらいなさいと言われたけど家の置き薬で大丈夫と伝えて今日は休んだ。

私は、寝ている達也くんに話しかけた。

「何か食べたいものある?」
「ハンバーグ・・」
「おかゆね。」

自分の現状を理解できているのかしら・・?
そう思いながら、台所に立つのだった。