理系彼氏!

あの日は、私がテストでいい点が取れなかった。
意地悪をするお母さん。
それを見て見ぬふりをするお父さん。
お兄ちゃんはその光景をさも楽しそうに笑いながらみている。
・・それがどうしても耐え切れなかった。

あの日は・・土砂降りだった。
肺炎にかかって死んでしまうならそれでもよかった。
あの家には帰りたくなかった。

『死んでしまいたい・・』

私は気がついたら大通りを傘もささずに歩いていた。
ひたすら・・どこに行くわけでもなく。

途中、知らないおじさんが私に声をかけてきた。
お金をあげるから、おじさんと遊ぼうと。
あんなに大嫌いなお母さんの言うことをそれでも忠実に守る。
優しかった頃のお母さんの言葉を・・。

『ごめんなさい、知らない人と遊んじゃいけないって言われてるので・・』

でも、おじさんはいいじゃんいいじゃんといいながら私を引っ張った。
怖いよ、助けて・・お兄ちゃん。
大通りに車が止まった。
乗せられてしまう!
私はとっさに大声を出す。
だけど、男の人の力には勝てない。

だけど、乗せられたときに私はあるものを見てしまった。
お兄ちゃんが私の乗せられた車に立ちふさがったのだ。

『どかなきゃ轢かれちゃうよ!!』

言っても聞こえないのに。

『どけ!弾くぞ!』

男の人はお兄ちゃんがどかないのを悟り、車をバックさせてお兄ちゃんに突っ込んだ。
お兄ちゃんは・・・病院に運ばれたけどそのまま死んでしまったらしい。

私は警察のお兄さんに保護されて、お兄ちゃんに対面できた。
・・・でも、もうお兄ちゃんは笑ってくれなかった。
どうしてあんなに意地悪してたのに助けに来たの・・?
明日香が嫌いじゃなかったの・・?

お兄ちゃんにそれを話しかけると、お母さんは私を見下ろして私に冷たく言い放った。

『人殺し・・』

悲しみと、憎しみ。
私が殺したわけじゃないのに。
私に向けられた私への憎しみ。

『お母さん・・』
『来ないで・・人殺し・・。あなたが家を飛び出さなかったらこの子は迎えに行くなんて馬鹿なことしなかった!!この子の人生をめちゃくちゃにして私やお父さんのまで・・。この子を返して!!!あなたなんか・・産むんじゃなかった・・疫病神・・・!!!』

私は・・あれから家に帰っていない。
どうやって育ったのかも覚えてない。
だけど、私は兄を殺めてしまった。
母の英才教育で数字が嫌いになってしまった。

だけど・・気がついたら病院の受付をして生きていた。

「明日香、何ボーッとしてんの?」
「あ、ううん・・。」
「お兄さんのお墓参り、いけないなら私が付き添う?」
「そうじゃないの・・」
「そう・・行ける時に行きなさいね」
「うん・・ありがとう」

樹里は優しい。
いつでも、相手を最優先にしている。
これが、お母さんの言ってた友達なんだろうな・・。