理系彼氏!

『明日香、痣増えてない?大丈夫?何かあったの?』
『ううん!なんでもないよ!転んじゃっただけなの!』

転んだにしてはありえない痣の数。
ありえない痣のでき方。

だけど、言えるわけもない。
勉強が兄より劣るせいで母に叩かれてます、なんて。
ましてや、父は見て見ぬふりで兄まで私を馬鹿にして殴ったり蹴ったりは当たり前だなんて。
言えるわけない。
みんなは口を揃えて『虐待だ』と囁いた。
でも幼い私にはわからなかった。

ギャクタイってなんだろう?
私はシツケをされてるだけよ。
出来の悪い私は叱られただけよ。
悪い子は叩かれて当然よ、悪い子だからご飯抜きも当たり前なの。

でも、私は・・・

「・・・すか。ねぇ・・あす・・・ってば!明日香・・!」

揺り動かされて、私ははっと目を開く。
目の前にいたのは樹里だった。
どうやらいつの間にか私は寝てしまったらしい。

「樹里・・あ・・ごめんね!急におしかけて急に寝ちゃって・・」
「いいからいいから。そんなところでうたた寝してたら体に悪いよ。ベット使っていいから。」
「でも、悪いよ。私、床でいいよ」
「達也くんがそれ知ったら私タダでは済まなそう。」
「きっと・・来ないよ。」
「あら、どうかしらねぇ。あなたの携帯に電話来てたわよメールもたくさん」
「え・・!?」

見てみると、着信履歴もメール履歴も「朝川さん」の文字で埋まっている。

「うそ・・」
「嬉しい?」
「どうして・・・」
「それだけ明日香が好きなんだよ。きっともうすぐここに迎えに来るんじゃない?」
「・・そうだね。だといいな・・」

達也くんはきっと、ここで諦める。
メールも電話もでないから。
きっと、私が嫌いになって・・それで・・。

「ねぇ、明日香。もうすぐお彼岸だね」
「そうだね・・」
「お兄さんのお墓参り、いかないの?」
「きっと、お母さんに怒られる・・」
「どうして?」
「出来が悪かった私のせいでお兄ちゃんは死んだから」

あの日のことはずっと私は忘れない。
ううん、忘れることができない・・。