喧嘩なんかありえないって思ってた。
でも、結構すれ違いが多かった。

なぜって、私は文系。
彼は理系。
彼は電卓男だったからだ。

告白の返事をしたときもそうだった。
距離を数字で見ている彼と感覚でみている私。
住んでる世界が違うんだろうけど、私的には一日を数字の中で過ごして欲しくない。
せめて、私の前だけは数字を忘れて欲しいと切に願うのだけれど・・。

「明日香、どうしたの?最近ため息ばっかりだね」

みづきと樹里はそんな私を必要以上に心配してくれた。
今日は達也くんの愚痴を聞いてもらおうと思ったんだけど、思い出すだけでため息が出てしまって愚痴も言えない。

「ため息もつきたくなるわよ・・はぁ・・」

みづきも樹里もあれから私と達也くんが付き合ったということは知っている。
だからこそみづきは前よりも相談に乗ってくれるようになった。
まともな意見と言い難いこともあるけど。

「何があったの?」

樹里は初芽さんとはうまくいくいかない以前に友達関係止まりらしく、誰とも付き合ってない。
そのため、この手の話は察しにくいらしい。

「大体、私なら理解できるけど。達也くんが数字男だったんでしょ?」
「なんでわかるの・・?」
「ゆうちゃんも最初はそうだったから。」

ゆうちゃん、というのはみづきの彼氏のことである。
でも、あのチャラ男が数字電卓男・・?
考えられない・・。

「でもさぁ、注意しても反論食うのよ・・」
「そりゃあ、そうよ。相手は数字、数学、理科なんかと仲良しするようなお仕事をしているといっても過言ではないんだから」
「そうだけどさぁ・・やっぱパソコンとラブラブなわけでしょ?いつになったら私をかまってくれるのかしら・・」

うーん、と黙り込む私とみづき。
それをみて樹里は口を開く。

「じゃあ、本当に好きでいてくれてるのか試してみたら?」
「どうやって?」
「きくかどうかはわからないけど、達也くんに挑発してごらん。」
「そんなことしたら私言い返されて負けちゃうわ」
「それでいいのよ」
「どうして?」
「言い返されて一度負けるの。そしたら、明日香が彼に「もう知らない!」
ってキレたらいいのよ。で、彼からの連絡を一度無視。あなたの家に来る可能性が高いから、あなたは私かみづきの家に泊まればいいのよ」
「あら、だめよ。私はゆうちゃんと住んでるもの」
「だったら明日香、私の家においでよ」

そこで、少し考えてみた。
樹里の言い分もわかる。
でも、もしそこで迎えにくることも、連絡もなかったらどうするの・・?

「もしも連絡もなく探しにもこなかったら・・?」
「それまでの男だったってことよ」
「・・・うーん」
「やってみるだけ損はないんじゃない?」
「そうだね、やってみる」

私は、自宅についてから樹里の言ったあの話を実行してみることにした。