理系彼氏!

目的地に着くと、彼は私を置いて犬のいる家のピンポンをおした。
私も急いで出て行くと、達也くんは口を開いた。

「犬が次、明日香さんから・・」

達也くんは言いかけた言葉を最後まで言わずに「ちょっとまってて」と言い残して車へ行ってしまった。
鍵をかけに行ったのかもしれない。

少しすると、家のドアは開いた。

「こんばんは、君が犬の貰い手?」

家から出てきたのは背の高い、茶髪の男性。
見た目から言えば20代前半だろう。

「あ、えと・・はい!」
「そう、あがって。」
「え?でも達也くんが・・」
「え?ああ、兄さんならすぐ上がってくるよ」

どういうことだろう?
兄さん・・?

「まぁ、とにかく上がってよ。」
「はい・・」

上がってみると、小さな犬が大きな部屋の中に数匹いた。

「わぁ・・可愛い!」

でもよく見ると、どれもこれも血統書がついてそうな犬種ばかり。
タダでもらえるわけはない。

「あの・・雑種はいないんですか?」
「雑種?ああ、ミックス?いないよ」
「でも・・こんな高そうな子は・・」
「犬でお金とろうなんて考えないよ。兄さんのお気に入りなんだしね」

お気に入り?
どういうことだろう?

「え?どういうことですか?」
「またまた、しらばっくれちゃってー」

そのとき、後ろから達也くんの声がした。

「あゆむ、いい加減にしろ。ほかの部屋行ってろよ」
「兄さん、早くその子ゲットしないと俺がとっちゃうよ」
「・・あゆむ」
「はいはい、わかったよ。じゃ、えーっと明日香ちゃんだっけ?いつでも遊びにおいでね!」

そう言って部屋から出て行ってしまった。

「どういうこと?」

私は達也くんに説明を求めた。