「やあ!」


「はっ」


庭では三成様と左近様が手合わせしている。


身長差や体格差はあるものの、力はほぼ互角のようで鍔(つば)ぜり合いが続いている。


佐和山城内のナンバーワンとナンバーツーの戦いに侍女達も興味津々だ。


黄色い歓声が飛び交う。


(あっ)


ふいに左近様と目が合う。


(頑張れ!)


そんな思いを込めて私は柄にもなくウインクしてみせた。


すると左近様は、ふっと微笑してくれる。


「やだ、左近様と目が合っちゃった♪」


後ろにいた侍女がキャッキャとはしゃいでいる。


「はあっ!」


左近様の雄叫びが響くと共に、三成様の竹刀が叩き落とされた。


「このオレが、負けただと?」


「はっはっは」


三成様は悔しがり、左近様は相変わらず大人の余裕を見せていた。


「負けた三成様も美しい…」


「さすが左近様。お強くて素敵」


侍女達は口々に言いながら戻っていく。


「愛しの左近様が勝って良かったわね」


隣のひなたさんがニヤニヤしながら肩を叩いてきた。


「いやいや、愛しのって」


「素直じゃないわね。左近様大好きなくせに」


「お、それは嬉しいですね」


ニコニコしながら左近様が近づいてきた。