夢を見た。


「左近様ー」


もう19歳だと言うわりには子供のようなあどけない彼女が手を振っている。


「友衣さん」


彼女の元へ行くと本当に子供のように嬉しそうな顔を見せてくれる。


ああ、早く会いたい。


そう思った時だった。


ドドドドド…。


「何事だ?!」


眠りから覚めた俺は慌てて外へ出る。


そして素早く屋根に登った。


「ふっ」


どうやら徳川の大群はすでに水口を通過して、先へ急いで行ってしまったらしい。


思わず苦笑いがこぼれた。


地方官の密告により、俺が家康を狙っていたことが向こうに知られていたということを知る由などない。


「ま、仕方ない」


己の敗北を思い知った俺は早々と佐和山へ帰還するのだった。


殿への報告を終え、自室へ戻る。


すると友衣さんがなんだかすごい顔で足早に入ってきた。